Vanished Kingdoms (Norman Davies)

ポーランド史家ノーマン・デイヴィスのVanished Kingdoms: The History of Half-Forgotten Europe を読みました。書店でたまたま手に取った本ですが、面白く読めました。

ヨーロッパ古今の「消滅した国」を1章ずつ取り上げ、その歴史を綴っています。登場するのは

著者の専門のポーランド周辺がやや多い以外は、時代も国もバラバラ。割いているページ数も取り上げ方もバラバラ(リトアニアの章は80ページもありますが、カルパト・ウクライナについては15ページしか書いていません)。ソ連やカルパト・ウクライナが入っているあたり君主国以外もありと著者の好みで取り上げたんではと疑問に思うほど、かなりごった煮の印象は否めません。しかし豊富な地図と豊かなエピソードや描写が読ませるため、本編700ページ以上になりますが飽きずに読めてしまいます。

「ごった煮」と述べましたが、 各章に伏流する隠れたテーマがあります。それは「消滅した国の歴史/記憶を誰が継承するのか」という問題です。ブルグンド/ブルゴーニュの章が特に示唆的で古のブルグンド王国の歴史/記憶を受け継ぐために後に続く国々が次々と同じ名を名乗っていく様が活写されています。また名は同じでも実態が全く異なるときにどのように現代の国が過去にあった国を歴史として受け継いでいくのか、プロイセンのように住民の入れ替えがあった国はどうなのか、各章を読むと思いが巡ります。歴史認識を巡る問題が世界各地でくすぶる中で本書はタイムリーな話題を扱っているようにも見えてきます。